
THE ART WORK

STATEMENT
作品について
WATCH CASE YUGEN 3-001
3本用時計ケース
三本の時計を収めるためにつくられた、小さな箱。しかし、その表面に現れているものは、一般的な時計ケースに求められる均質な美しさとは明らかに異なる。Michel & Carigo がこの作品に与えたのは、UNDULATIONから生まれたカテゴリー、YUGENの思想である。
銀色の表面には、規則と不規則が交錯する無数の痕跡が刻まれている。流れるような線、隆起する塊、途切れ、重なり、そしてその間に生まれる深い陰影。それは波のようにも見え、岩肌のようにも、あるいは時間によって侵食された未知の物質のようにも見える。だが、YUGENにおいて重要なのは、それが「何に見えるか」ではない。光が触れるたびに表情を変え、見る位置によって輪郭さえ異なって感じられること。つまりこの表面は、完成された一つの像ではなく、見るたびに生成され続ける像なのである。
その造形を、三本の時計を収めるという極めて日常的な機能へと結びつけた。時計は時間を計測する道具である。しかし私たちは、時間そのものを見ることはできない。見ることができるのは、針の移動、数字の変化、そして物質に残された経年の痕跡だけである。
YUGENもまた、目には見えないものを直接描こうとはしない。光、反射、凹凸、陰影。それらの変化を通して、そこに存在している何かを感じさせる。だからこそ、時計とYUGENは奇妙なほど自然に結びつく。
三本の時計とは、単なる三つの所有物ではない。それぞれに異なる記憶があり、異なる時間があり、身につけた人間との異なる関係がある。その三つの時間を、一つの物体の中に静かに収める。
WATCH CASE YUGEN 3-001 は、収納のためのケースであると同時に、時間を保管するためのオブジェクトでもある。
Michel & Carigo が目指しているのは、アート作品の形をしたプロダクトではない。また、プロダクトの表面を装飾しただけのアートでもない。「使うこと」と「鑑賞すること」が分離しない存在。蓋を閉じて置かれた瞬間には一つの彫刻となり、蓋を開けば、大切な時計を守るための道具となる。
機能と造形。
日常と非日常。
静止と変化。
その境界に存在するものこそ、Michel & Carigoが考えるファニチャーである。そして同じものを反復してつくることのできないYUGENの表情によって、この小さなケースは量産品ではなく、一つの個体となる。
三本の時計を収める。
三つの時間を収める。
そして、その外側では光が絶えず揺れ続けている。
YUGEN WATCH CASE — 3
日常のための道具であり、日常の中に置かれる、一つのアートである。
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