
THE ART WORK

STATEMENT
作品について
銀を纏い、再び時を刻む
UNDULATION から生まれたファニチャーブランド、Michelle &Caligo。そのテーブル・コレクションに属する本作は、二千六百年という途方もない時間を内包した神代杉と、炎によって姿を変えた鉄との邂逅から生まれた。
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地中に眠る、二千六百年の記憶
天板に用いたのは、鳥海山の地中より出土した神代杉である。神の御代の杉と書くその名のとおり、遥かな歳月を地中深くに眠り、光も風も届かぬ場所で静かに時を蓄えてきた材である。
その表面をバーナーの炎で炙ることで、長い年月のうちに刻まれた木目や節、亀裂、隆起が鮮明に立ち現れる。さらに、本物の銀を主成分とする特殊な塗料を重ねる。しかし、銀の発色を人為的に整えることはしていない。どこまで光り、どこで沈み、どのような色彩へと変化するのか。そのすべてを神代杉自身に委ねている。
硬く締まった節の部分では、銀は鋭く、鮮烈に輝く。一方、節と節の間に広がる柔らかな木肌は塗料を深く吸い込み、鈍く沈んだ光を宿す。ある場所では冷たい白銀となり、またある場所では黒に溶け、銀になりきらぬ曖昧な光として留まる。それは均質な金属の光沢ではない。二千六百年を生きた木の密度と記憶が、自ら選び取った発色である。
幾重にも波打つ木目は地層のようであり、水脈のようでもある。複雑に緩み、うねり、重なり合う節の痕跡は、もはや単なる木の表情を超え、一枚の巨大な抽象画を形成している。炎と銀はその紋様をつくり出したのではない。ただ、長い眠りの奥に潜んでいたものを、光のもとへと導いたのである。
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炎が鉄に与えた、ロマンティックなねじれ
圧倒的な存在感をもつ天板を支えるのは、純粋な角鉄を火で炙り、不規則にねじり上げた複数の鉄脚である。一本として同じもののない鉄の棒は、ときに植物の根のように大地へ伸び、ときに細い枝や触手のように空間をさまよう。重量を受け止める構造体でありながら、その姿には硬質さだけでは語れない優美さがある。炎のなかで生まれたねじれは、力強く、繊細で、どこかロマンティックである。
銀を纏った神代杉の量感に対し、鉄脚は決して競い合わない。確かな強度を保ちながらも、黒い空間へ溶けるように佇み、天板の存在を静かに浮かび上がらせる。重厚な木と鉄、眩い光と深い影、悠久の時間と一瞬の炎。対照的な要素が互いを損なうことなく、緊張を保ったままひとつの均衡へと結ばれている。
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過去を抱き、これからの時間を生きる
二千六百年ものあいだ地中に眠っていた神代杉は、自らがいつか銀を纏い、ねじれた鉄に支えられ、テーブルとして新たな時間を刻み始めることなど、夢にも思わなかったはずである。
人と素材との出会いもまた、あらかじめ定められたものではない。遠い過去を生きた一本の杉が地中から現れ、炎と銀に触れ、鉄と結ばれ、現代の空間に立つ。その偶然は、人生に訪れる不可思議な出会いそのものである。
これは過去を保存するための家具ではない。
二千六百年の記憶を抱いたまま、これからの時間を生きるためのテーブルである。
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