
THE ART WORK

STATEMENT
作品について
WATCH CASE YUGEN 3-000
3本用時計ケース
これは、三本の時計を収めるためのケースである。同時に、ひとつの小さな彫刻でもある。表面を覆うのは、銀を思わせる塗装ではなく、本物の銀によって生み出された表層。その銀の上を、無数の線が走る。ある場所では緩やかに湾曲し、ある場所では激しく交差し、またある場所では深い谷となって光を飲み込む。均一な鏡面ではない。完全な粗面でもない。
光を強く返す場所と、影の中へ沈む場所が一つの表面に共存することで、銀という物質は単なる「色」ではなく、光そのものを受け止める存在へと変わっていく。見る角度を変えるたびに、明るかった場所が暗くなり、闇の中にあった線が突然光を放つ。
静止しているはずの物体が、見る者の移動によって動き始める。
そこには、UNDULATIONの思想がある。UNDULATIONが扱ってきた「揺らぎ」とは、単に波の形を描くことではない。光、時間、物質、そして人間の知覚。存在するものは固定された一つの姿だけを持つのではなく、周囲との関係によって絶えず異なる表情を現す。その考えを、Michel & Carigoは日常の中で使用されるプロダクトへと移し替える。そこから生まれたものが、この YUGEN WATCH CASE である。
YUGEN――幽玄。
すべてを明確に見せるのではなく、見えているものの奥に、まだ見えていない何かを感じさせること。銀の表面には、具体的な風景も、決められた図像も存在しない。それでも、波を見る者がいるかもしれない。風を見る者がいるかもしれない。岩肌や地層、あるいは何か未知の生命の痕跡を見る者もいるだろう。しかし、それを一つの意味に固定する必要はない。YUGENがつくり出そうとしているのは「答え」ではなく、見る者の中に生まれる余白だからである。
そして蓋を開けば、このオブジェクトは三本の時計を守るための道具へと変わる。閉じればアート。開けばプロダクト。だが、その二つを分ける必要はない。Michel & Carigoが目指しているのは、アートを日常へ「持ち込む」ことではない。
日常そのものの中に、最初からアートが存在している状態をつくること。
美術館へ行かなければ出会えないものでもなく、特別な時間だけに鑑賞するものでもない。
朝、時計を選ぶとき。
夜、その時計を戻すとき。
何気なくケースの前を通り過ぎたとき。
そのたびに銀は周囲の光を拾い、異なる表情を見せる。使うという行為そのものが、作品を見るという行為へと変わっていく。そして三本の時計には、それぞれ異なる時間が蓄積されていく。
身につけた場所。
誰かと過ごした時間。
記憶に残る一日。
その三つの時間を守る器の外側で、銀はその瞬間の光だけを受け取り、絶えず新しい像を生み出している。過去を刻む時計と、現在の光を映し続ける銀。その二つが、一つの小さな箱の中で出会う。
YUGEN WATCH CASE — 3
三つの時計を収めるための器。
三つの時間を守るためのオブジェクト。
そして日常の中で、光を受けるたびに姿を変え続ける、一つのアート。
Michel & Carigo
日常そのものの中に、最初からアートが存在している状態をつくる。
それが、私たちの考えるファニチャーである。
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