
THE ART WORK

STATEMENT
作品について
Watch Case YUGEN 10-000
10本用時計ケース
これは、時計を収めるためだけのケースではない。時間を収めるための、小さな建築である。Michel & Carigoが目指すのは、アートを鑑賞のためだけの存在から解放し、日常の中へと持ち込むことだ。
UNDULATIONから生まれたカテゴリー「YUGEN」。その表面に現れる光沢、隆起、流れ、そして複雑に重なり合う陰影は、あらかじめ均質な形として設計されたものではない。光を受ける位置、見る角度、周囲の環境によって、その表情は絶えず変化していく。その造形思想を、一つの時計ケースへと転換した。銀色の外殻には、静止しているはずの物質の中を何かが流れ続けているような起伏が走る。ある部分では波のように、ある部分では地層のように、またある部分では未知の生命体の表皮のようにも見える。しかし、そこに特定の形を見つける必要はない。
YUGENが扱うのは、「何であるか」を明確に説明することではなく、見る者の意識の中に、まだ名前のない感覚を発生させることだからだ。ケースを開くと、外側の激しい造形とは対照的に、深い黒の世界が現れる。
内部は全面をブラック・クロコダイルで仕立て、10本の時計をそれぞれ独立して収納する構造とした。木部の温度、黒革の静けさ、金具の微かな輝き。そして外殻を覆うYUGENの金属的な光。異なる質感が一つの箱の中で共存する。時計とは、不思議な存在である。
時間そのものを見ることはできない。私たちが見ることができるのは、針の移動や数字の変化によって示された、「時間の痕跡」にすぎない。YUGENもまた、不可視のものを直接描くのではなく、光や反射、物質の表情によって、その存在を感じさせようとする。だからこそ、このケースに時計を収めるという行為には、単なる収納を超えた意味が生まれる。
十本の時計。
十の異なる時間。
そして、それらを包み込む一つのYUGEN。
Michel & Carigoが提案するのは、「ART」と「PRODUCT」という二つの領域を単純に組み合わせることではない。機能を持つものが、その機能を失うことなくアートになり得るのか。そしてアートは、美術館やギャラリーを離れ、私たちの日常そのものの中に存在できるのか。その問いに対する一つの回答が、この時計ケースである。
同じ表情を持つものは二つとして存在しない。表面に刻まれた起伏も、反射する光も、その瞬間ごとに変わっていく。工業製品に求められてきた「均一性」とは逆方向にある、唯一性。所有するというより、共に時間を過ごす。時計を守るためのケースでありながら、それ自身もまた時間とともに存在し続けるオブジェクトである。
Watch Case YUGEN 10-000
アートを日常へ。日常を、再びアートへ。
Michel & Carigo がつくろうとしているのは、その境界が消えてしまった場所に存在するものなのである。
DETAILS









