KUWAI HANA

Between Emotion and the Laws of Nature

2007 TwinCam FXSTB 300 WIDE TIRE CUSTOM : GILDA

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約6分

BLACK & SILVER — 信頼から生まれた、ひとつの完成形

統御(とうぎょ)とは…
多数の強い要素を一つの秩序の中へ収める力

ベースとなったのは、2007年式 Harley-Davidson Twin Cam FXSTB。この車両の製作は、広島にお住まいの一人のオーナーからいただいた、非常に強いオファーから始まった。その方とは、それまで一度もお会いしたことがなかった。製作中の連絡も、ほとんどが秘書の方を介して行われていた。にもかかわらず、オーナーから伝えられた言葉は極めて明快だった。

「あなたの技量を信じている。あなたが美しいと思うものをつくってほしい」

さらに、カスタム費用についても上限は設けられなかった。カスタムビルダーにとって、これほどありがたく、同時に重い依頼はない。自由とは、何をしてもよいということではない。判断のすべてを自らに委ねられるということである。だからこそ、この車両には一切の妥協を持ち込まなかった。

当時の自分が美しいと考えていたハーレーダビッドソンの姿。長年追い続けてきたユーロ・カスタム、とりわけジャーマン・スタイルの思想を、自分自身の解釈によって一台の車両へと凝縮した。前後ホイールには、ドイツを代表する老舗カスタムメーカー、RICK’S MOTORCYCLES製を採用。高い加工精度を持つアルミニウムホイールの繊細なスポークは、この車両を構成する重要な視覚要素となっている。一方、フロントには、当時世界のハイエンド・カスタムシーンで強い存在感を放っていたカナダの Goldammer による3Dアルミビレット・フロントフォークを装着。巨大な部品によって威圧感をつくるのではなく、精密に削り出された構造物そのものの美しさによってフロントセクションを成立させた。

造形と機能を分離しないこと。

リアタイヤには300ワイドを採用した。しかし、単純に太いタイヤを装着するだけでは、BAD LANDの仕事とはならない。極端なワイドタイヤ化によって発生する駆動系のオフセットや、車体中心線、左右重量バランスへの影響を根本から処理するため、RICK’S MOTORCYCLESによるワイドタイヤシステムを組み込んだ。300サイズという巨大なリアタイヤを成立させながら、車体全体のバランスと走行性能を犠牲にしない。それは、この車両に限らずBAD LANDが一貫して大切にしてきた考え方でもある。そして、この車両で最も重要なのは、外部から購入した高額なパーツだけではない。

フロントフェンダー。
リアフェンダー。
ガソリンタンク。
ハンドルバー。
エキゾースト。
エアクリーナー。
ナンバープレート・サイドマウントブラケット。

車両全体の輪郭を決定するこれらの部品は、すべてBAD LANDにおいて、この一台のためにゼロから製作した。既製部品を組み合わせて一台を構成するのではなく、必要とする線が存在しなければ、その線そのものをつくる。必要な形状が存在しなければ、金属から形を起こす。そうして少しずつ、それぞれの部品が単体として主張する状態から、一台のオートバイとしてひとつの輪郭を持つ状態へ収斂させていった。カラーリングもまた、この車両では意図的に抑えた。使用した基本色は、黒と銀。華美なグラフィックも、多色による装飾も必要ないと考えた。

深いブラックの面。
アルミニウムと金属が放つシルバーの光。
エンジンのフィンに連続する水平線。
前後ホイールから放射状に広がるスポーク。

黒が量塊をつくり、銀がその輪郭を切り出していく。300ワイドタイヤを持つ重量級のカスタムでありながら、この車両がどこか端正に見えるのは、そのためだと思う。派手さを削ぎ落としたからこそ、プロポーションそのものが前面に現れた。ロング&ローでもない。過度に攻撃的でもない。巨大なリアタイヤからフューエルタンクを経てフロントフォークへと続く線が、一つの連続した運動として車体を貫いている。

私にとってこの車両は、当時追求していたジャーマン・スタイルを中心とするヨーロピアン・カスタムへのひとつの到達点だった。そして、完成した今見返しても、私はこのオートバイを美しいと思う。それは、自画自賛であって構わない。なぜならこの車両には、その時の自分が持っていた技術も、経験も、情熱も、そして美意識も、惜しむことなく投入したからだ。

完成後、私は飛行機で広島へ向かった。そこで初めて、この車両を託してくださったオーナーと顔を合わせた。それまで一度も会うことなく、製作者である私を信じ、ほぼすべてを任せてくださった方だった。直接お会いして、心から感謝を申し上げた時のことを、今でもよく覚えている。

カスタムオートバイは、機械である。しかし、一台のカスタムが生まれる背景には、必ず人と人との関係がある。この車両は、そのことを私に強く教えてくれた一台でもある。

技術を信じてもらうこと。
美意識を信じてもらうこと。
そして、その信頼に作品で応えること。

BAD LANDにとって、このFXSTBは単なる過去の製作車両ではない。私が追い続けてきたユーロ・カスタムの思想と、BAD LANDの造形技術と、一人のオーナーから預かった全面的な信頼。その三つが重なり合って生まれた、BAD LANDにおける、ひとつの完成形である。

  • FRONT FORK : GOLDAMMER
  • FRONT WHEEL : RICK’S MOTORCYCLES / SUPER STEVE 3.5 × 21″
  • REAR WHEEL : RICK’S MOTORCYCLES / SUPER STEVE 10.5 × 18″, DRIVE SIDE BRAKE SYSTEM
  • WIDE TIRE KIT : RICK’S MOTORCYCLES / 3-DRIVE WIDE TIRE KIT
  • HEAD LIGHT : BAD LAND in ONE-OFF
  • HANDLEBAR : BAD LAND in ONE-OFF
  • GASTANK : BAD LAND in ONE-OFF
  • FRONT FENDER : BAD LAND in ONE-OFF
  • REAR FENDER : BAD LAND in ONE-OFF
  • EXHASUT : BAD LAND in ONE-OFF
  • FRONT & FOOT CONTROL KIT : PERFORMANCE MACHINE
  • FRONT BRAKE CALIPER : PERFORMANCE MACHINE
  • E/g & T/M COVER : CARBON
  • EFI : THUNDER MAX
  • PAINT : BUSH ART
  • SEAT : CLIONE SPEED
  • And more…

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