
THE ART WORK

STATEMENT
作品について
龍台
日常そのものの中に、アートが存在している状態をつくること
UNDULATION において、龍、あるいは龍神は、極めて重要な主題のひとつである。本作は、これまで〈 DRAGON 〉というカテゴリーの中でさまざまなかたちへと展開してきた龍の存在を、あえて明確な身体をもつ立体造形として、この世界に出現させようとした作品である。
細い金属パイプをいくつもの短い断片に切り分け、それぞれにわずかずつ異なる角度を与えながら接合することで、龍が身体をうねらせ、とぐろを巻き、暗闇の中から天へと昇っていく姿を形づくっている。ひとつひとつの断片は独立した金属片でありながら、連結されることで途切れることのない運動を生み、硬質な物質の内部に、柔らかな生命の流れを宿していく。
連続するパイプの継ぎ目は、龍の鱗であると同時に、時間の堆積でもある。切断し、角度を定め、溶接するという行為が繰り返された痕跡は、そのまま龍の身体を構成するリズムとなる。金属の表面を走る光は、見る者の位置や周囲の明るさによって絶えず変化し、静止しているはずの龍に、今まさに身をくねらせているかのような動きを与える。作品をかたちづくる物質、制作の時間、身体的な反復がひとつに重なり、上昇する生命の軌跡として立ち現れるのである。
私は子供の頃から、龍にひどく惹かれてきた。同時に、龍のほうからも、なぜか私を見つけ、好いてくれているように感じてきた。私が龍を求めるだけではなく、龍もまた私を呼び寄せる。その相互的な引力は、私の記憶や感覚の奥深くに長い時間をかけて根づき、作品世界を形づくる源泉のひとつとなっている。本作には、龍という目には見えない存在への畏敬と、幼い頃から続く私的で親密な結びつきが込められている。
龍は、地上と天上、水と空、物質と精神、日常と神聖といった、異なる領域のあいだを自在に往来する存在である。本作における龍のうねりは、単なる身体の形態ではない。それは世界の異なる層を結びながら上昇していく力の流れであり、人間の知覚を超えた場所へと向かう祈りの軌跡でもある。暗闇は龍の姿を覆い隠すものではなく、むしろその存在を呼び起こす空間である。深い闇の中で金属の鱗だけが光を受け、龍神は沈黙のうちに姿を現す。
一方で、本作は鑑賞するためだけの彫刻ではない。上部に花器や植物などを置き、花台として日常生活の中で使用することも可能であり、ファニチャーとしての性格を併せ持っている。しかし、ここでの機能は彫刻に付け加えられた補助的な要素ではない。人が作品に触れ、何かを置き、暮らしの中で使い続けることによって、作品と生活とのあいだに新たな時間と関係が生まれていく。その関係性までを含めて、本作は完成していくのである。
花を支える台として使われるとき、龍は大地から伸び、植物の生命を天へと運ぶ存在にも見えてくる。花は季節とともに移り変わり、やがて枯れ、別の花へと置き換えられる。その変化を受け止めながら、金属の龍は変わることなくそこに在り続ける。儚い生命と持続する物質、自然と人工、用途と象徴がひとつの空間で交差することで、作品は固定された意味から解放され、日々異なる表情を見せ始める。
美術館やギャラリーの中だけにアートが存在するのではなく、生活の中に、最初からアートが存在している状態をつくること。それもまた、「アンドゥレーション」が担う大きな使命のひとつである。アートを日常の外側にある特別なものとして隔離するのではなく、花を飾ること、ものを置くこと、同じ空間で時間を過ごすことの中に組み込んでいく。作品を見ることと使うこと、鑑賞と生活との境界を曖昧にし、日常そのものを静かに変容させていくのである。
暗闇の中で身をくねらせながら天へと昇る龍神は、神聖な存在でありながら、同時に人の暮らしの傍らに立つ存在でもある。超越的なものと日常的なものを分けるのではなく、ひとつの造形の中で共存させること。本作が目指しているのは、龍神を表現することだけではない。龍神とともに暮らす空間をつくり、日常の内部に、目には見えない世界へと通じる入口を開くことなのである。
◯ 高さ : 860mm
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