
旅立ちの港 ― 2008年6月20日、富山
写真のメタ情報に残る日付は、2008年6月20日。この日、私の友人はハーレーダビッドソンにまたがり、ロシアを横断してヨーロッパを目指すという、途方もない旅に出た。
その計画を初めて耳にしたとき、私は本当に自分の耳を疑った。せめてオフロードバイクであれば、と思ったが、いや、たとえオフロードバイクであったとしても、あまりに無謀な計画だと感じた。私だけでなく、多くの友人たちが彼を引き止めようとした。けれど、彼の決意は揺るがなかった。そして旅は、決行されることになった。
広大なロシアの大地を越え、ヨーロッパを巡る旅。冒険心とロマンに満ちた計画であることは、私にもよくわかっていた。それでも、重量級のハーレー、しかも大幅にカスタムされたハーレーで大陸を横断することには、計り知れないリスクがあると思えてならなかった。
それでも彼は行くという。大げさに言えば、今生の別れになるかもしれない。そんな思いもあって、私は彼の旅立ちの港まで見送りに行くことにした。港は富山。父方の故郷でもある土地だ。当時の私は猛烈に忙しい日々を送っていたが、富山という縁にも背中を押され、彼のもとへ向かった。
彼が船に乗り込むのを見届け、私はとんぼ返りで横浜へ戻った。
それから一年近くをかけて、彼は無事にヨーロッパへたどり着き、自らの夢を叶えた。これらの写真は、その長い旅の始まりの日に、富山で撮ったものである。





